納涼特集 - タイの田舎家で起きた奇妙な夜
- 7月3日
- 読了時間: 6分

本編には物語上の演出として喫煙に関する描写が含まれています。
本編は、僕がタイの静かな田舎家で体験した出来事を、納涼特集として再構成した話だ。
タイの田舎の村には、周囲にさまざまな家が意外と多く集まっていた。その中の一軒が、僕が数か月のあいだ韓国と行き来しながら過ごしていた家だった。もちろん、タイにいる家族もそこに暮らしている。

その日は周辺の停電で、村全体がブラックアウトしていた。
エアコンも扇風機も動かなかった。強い湿気が体を不快にさせ、空気は重く沈み込んでいた。
結局、耐えきれず階下へ降りて発電機を確認しようとしたが、使い方がわからなかった。
ああ…くそ。
僕は手で巻いておいたローリングタバコを一本吸いながら空を見上げた。だいたい午前1時頃だったのに、雲がはっきり見えた。まるで雲が闇をたっぷり吸い込んでいるようだった。
ローリングタバコをくゆらせながら少し目を閉じた。そして周囲の空間に響く虫の声を聞いていた。
ヒキガエル、キリギリス、コオロギ、ヤモリの鳴き声。その中でひときわ鋭い音は正体がわからなかった。まるで刃物を研ぐ金属音に似ていた。
もしかすると、たくさんの虫の声が一つに重なって、共鳴のように変わっていたのかもしれない。よく聞くと、本当にぞっとした。
でも僕は、その音がとても好きだった。
「くそ…こういうのが生きてるってことだよな。」
僕はそうつぶやきながら、吸い終えたローリングタバコの灰を手で払い、小さな灰皿ケースの中に入れた。そして引き戸を開けて家の中に入り、戸を閉めた。
そのあと、手で巻いておいたローリングタバコを木のテーブルの上に置いた。
その時だった。
突然、シューッという音がして、同時に背筋が冷たくなった。
一瞬、虫の声すら聞こえなくなった。そして強い冷気が体を這い上がってきた。
「…くそ。」
僕は小さく声を漏らし、ゆっくり後ろを振り返った。
引き戸が開いていた。
どういうことなのかわからなかった。僕はローリングタバコをもう一本持って外へ出て、もう一服した。
その前には、巨大なキリギリスがいた。見た目はかなり立派な大きさだった。
この個体は格好よかったが、僕はあえて触らない。かなり鋭い顎をしているからだ。救急病院まではかなり離れていたし、タイの田舎の村でわざわざ危ないことをする気にはなれなかった。
これは僕の鉄則だ。

「くそ…とんでもなく大きいやつだな。」
僕はそう言いながら、吸い終えたローリングタバコの灰を払い、また小さな灰皿ケースに入れた。
だが、おかしかった。
灰皿の中には、さっき確かに入れたはずの吸い殻が一つなかった。
記憶が正しければ、そこには燃え尽きたローリングタバコの吸い殻が一つあるはずだった。
少し不思議に思いながら灰皿ケースを見つめた。鼻筋に冷や汗が流れた。
僕はゆっくり引き戸を開け、もう一度閉めてから中へ入った。
ところが妙な気分になった。よく考えてみると、僕は戸を閉めた覚えがなかった。
たしか僕は「くそ」とつぶやいたあと、そのまま外に出てローリングタバコを吸ったはずだ。
まあ、偶然だろう。深夜だし、みんな寝ているし、ここにいるのは僕だけだ。きっと大丈夫だ。
僕は階段を上がり、二階の主寝室へ向かった。
そして戸に鍵をかけ、大きすぎるベッドに横になった瞬間、エアコンがまた動き出した。
「おお。」
僕は思わず声を上げ、布団をかぶった。布団をかぶったまま意味ありげに鼻を鳴らし、スマートフォンをつけた。
その時、どこからか階段を上ってくる音が聞こえた。
え? この時間に上がってくる人なんていないはずなのに。
そう思い終える前に、
ドン。ドン。ドン。
音が聞こえた。
強心臓の僕は布団を跳ねのけ、「誰だ?」と叫んだ。そしてまた背筋に冷気が走った。
僕は幽霊を怖がらない。どんなことにも必ず原因と結果があるだけだ。
この世に幽霊はいない。それは僕が保証する。
そう思いながら、僕は動画を撮影した。
息を切らしながら、少しだけ戸を開けてみた。
そこには誰もいなかった。
確かに音は聞こえたのに。
読者には少し伝わりにくいと思うので、例を出してみる。
よくあるホラー映画で、静寂が流れたあと、木造の屋根裏部屋のような場所で何かが動く場面を見たことがあるだろうか。たとえば日本のホラー映画やアメリカのホラー映画によく出てくる、あの屋根裏の音だ。
ドン。ドン。ドン。スルルルッ。ドン。コン。
まさにあの音だった。
もし読者がここに来て一晩だけ寝て帰るなら、怖くなってすぐ航空券を取って帰る方に一票を賭ける。くそ!
僕がタイに住んでいるあいだ、その後も音は続いた。音は不規則だった。
実は僕は、あとになってその原因を見つけはした。
犯人はハウスゲッコーたちだった。
こいつらが壁に張りついて、全身でツイストを踊るように、間抜けだけど少し可愛くうろうろ動く時に出る音だった。
もし幽霊のような恐ろしいことが実際に起きたとしても、僕の考えは大きく変わらない。それはもはや単に怖いものではなく、僕たちが背負っていく誰かのかすかな残像、あるいは集合的無意識の痕跡なのではないか。
それはむしろ、長い歳月と歴史が通り過ぎた場所の記憶であり、その残像を、意識が目覚めている時にほんの少しだけ間接的に体験しているのではないか。
そうして数か月が過ぎ、韓国に到着した僕は、まずリンボーのような姿勢で空港の喫煙所へ直行した。
そして喫煙所に着いたあと、ローリングタバコを一本取り出して火をつけながら考えた。
でも…あの日、タバコケースの吸い殻はなぜ消えたんだ? 戸が勝手に閉まったり開いたりしたのは何だったんだ?
あの音はヤモリの音だったじゃないか..
そう思った頃、
その考えと同時に、タバコを持つ指先がかすかに震えた。え?.. 小さな声とともに、
正面を見上げると、喫煙所にいた人たちは僕をじっと見ていた。
長い髪のアジア人女性の横にいた一人のアメリカ人は、ハワイで見かけそうなシャツを着ていた。
え?..

その後、数年が経って聞いた話によると、しばらくその家に泊まった人たちも、変な人影を見たとか、変な音が途切れなかったと言っていた。
こんにちは。この話は、背筋が冷たくなった実体験をミニマルなウェブ小説として形にしてみたかったものです。文章力が特別に優れているわけではありませんが、興味を持って読んでくださりありがとうございます。
2026年6月27日、タイで永眠されたお父様を深く追悼します。残されたタイのご家族の皆さまに心よりお悔やみ申し上げます。謹んで故人のご冥福をお祈りいたします。
© 2026 FR badagga / 고독한바닥가. All rights reserved.

.png)




